名古屋市では、全国に例を見ない先進的なキャリア教育を行っています!
企業による出前授業や、職業体験・職場訪問など、子どもたちが本物のヒト・モノ・コトとの出あいを通じて、自分らしい生き方を実現する力を身に付ける授業などの時間「キャリアタイム」を全ての市立小学校・中学校・高等学校・特別支援学校で実施しています。
明豊中学校(南区)で行われたキャリアタイムの様子


キャリアタイム
名古屋市が独自で実施する、【実社会で活躍する本物のヒト・モノ・コトとの出あいや日ごろの授業などを通じて、子どもたちが自分の「好き」や「できる」を大切にしながら、人生の多様な選択肢の中で、自分らしい生き方を実現する力を身に付ける時間】のこと。
今回は、名古屋市名東区にある、前山小学校で2025年2月に実施されたキャリアタイムの取り組みをご紹介します!

今回の取り組みの【すごい】ポイント!
- 3つの小学校(前山・梅森坂・牧の原小学校)が合同で実施!
- 小学6年生約150名が参加!
- 12の企業・団体が参加!
参加した児童は、12の企業・団体のそれぞれの体験内容から、興味のあるものを2つ選んで参加します。
今回の体験メニュー
- 【保育士】手遊び・絵本の読み聞かせ
- 【マジシャン】マジック
- 【警察】モンタージュ・鑑識
- 【消防士】救命救急
- 【銀行員】札勘
- 【スクールカウンセラー】カウンセリング
- 【アナウンサー】原稿朗読
- 【デザイナー】オリジナルトレーディングカード作り
- 【司書】本のカバー掛け
- 【スポーツインストラクター】スポーツリズム
- 【調理師】味噌煮込みうどん作り
- 【プログラマー】プログラミング教室講師
当日の様子を一部ご紹介します!
警察の鑑識体験
警察官に、モンタージュの作成や、指紋採取の方法を教えてもらいました。



マジック体験
マジックのコツを教わり、みんなでやってみます。



マジックはどれだけ練習したとしても、本番一回で成功しないといけない、というお話が印象的でした。
味噌煮込みうどん作り
大久手山本屋の皆さんにやり方を教えてもらいながら、うどんの生地を伸ばし、生地を切っていきます。




作った味噌煮込みうどんはみんなで試食!




調理体験だけでなく、味噌はどうやってできるのか、お客様に提供されるまでにどれくらい多くの企業がかかわっているのかといった、食育の観点でのお話もとても印象的でした。
大久手山本屋 青木裕典さまにお話をうかがいました!

キャリアタイムに参加したきっかけ
弊社は大正14年に創業し、今年で100年を迎えられたのは名古屋を中心とする皆さまのおかげだと思っております。美味しい味噌煮込みうどんをご提供するだけでなく、できる限り地域の皆さまへの貢献をしていくことも私どもの使命だと考えております。
今回のキャリアタイム事業は、地域の子どもたちにさまざまな仕事を伝え、働く楽しさを分かっていただける、とても素敵な事業だと感じました。私どもの仕事も数ある職業の中の魅力ある仕事のひとつとして、うどんを作ることの楽しさを感じていただけたら嬉しいと思い、参加させていただきました。
当日の子どもたちの反応で印象的だったこと
うどんができる工程をはじめてみた!こんなに大変な作業で作っているならもっと味わって食べる!という嬉しいコメントをいただきました。また、想像以上に皆さまが黙々と一生懸命うどんを作っている姿に感動しました。
また、体験いただいた方の多くがお店にも食べに来てくれて、プロの麺を食べに来た!と言ってくれたのもうれしかったです。
子どもたちに伝えたいこと

味噌煮込みうどんをはじめ、名古屋には独自のとても美味しい食べ物がたくさんあり、さまざまななごやめしを食べて、知ってほしいです。僕たちが住む名古屋の食文化をみんなで知って、名古屋に来る人々にもおすすめしてほしいです。
そして、飲食店で働いている人たちはお客さんのために一生懸命ごはんを作っているので、みんながごはんを食べに行くときは作ってくれてありがとう!と伝えてほしいです。
うどん作り体験で工夫していること
まずはうどんを作ってみる!という楽しさを重視して体験いただいています。あまり難しいことは言わずに「僕は名古屋の味噌煮込みうどんを作ったことがある!」という経験を自慢してくれるようになっていただきたいと思っています。
また、麺が太かったり、細かったりすることも個性だと伝え、みんなで作ったうどんをみんなで食べて、うどんを通じてよりよりパートナーシップにつながるようにしています。
また、なごやめしは名古屋にしかない独自の素敵な文化であることを伝え、名古屋の食を好きになっていただき、名古屋人としてのシビックプライドがより醸成されたらいいなと思い、お話させていただいております。
今回の取り組みで感じたこと
私どもは普段お店にお越しになられる子どもたちとの触れ合いはありますが、実際に一緒にうどんを作る経験は多くはありません。子どもたちの積極的な姿勢に感動し、私ども大人もとても勉強になりました。
そして、お店でおいしかったと喜んでいただくだけでなく、味噌煮込みうどんを通じて名古屋の魅力を伝えることやうどんを一緒に作って仲良くなることなど、味噌煮込みうどんにはさまざまなことができるポテンシャルがあると実感できました。

青木さま
子どもたちがさまざまな職業を体験する取り組みはとても素晴らしく、普段なかなか接することのない大人たちと触れ合えるよい機会だと思います。また、大人たちにとっても、とても勉強になる機会です。
今後もぜひ続けていただき、私どももご一緒できれば幸いです。味噌煮込みうどんは名古屋の食文化の魅力を伝える手段のひとつとしてさまざまな皆さまとともに体験をできたら幸いです。
この度は素敵な機会をいただいた学校の皆さま、児童・親御さん、ボランティアスタッフの皆さま、名古屋市役所の皆さまをはじめ、すべての方に感謝申し上げます。
ありがとうございました。

INFORMATION
お名前
青木裕典さま
お仕事
大久手山本屋
サイト
https://a-yamamotoya.co.jp/
プログラミング体験
パソコンを使わない、プログラミング体験。アルゴリズムについて考え、プログラミング的思考を身につけます。


今回は、指を使って二進法について、みんなで考えました。


ちなみに、両手を使えば1023まで数えられるそうです!
プログラミング教室BINGO 佐藤晋平さまにお話をうかがいました!

普段のお仕事について
私たちは、園児から大学生までを対象に、プログラミングを通じて「学ぶ楽しさ」を育むオンライン教室を運営しています。マインクラフトやロブロックスなど身近な題材からはじめ、情報オリンピックへの挑戦や企業との共同開発など、社会と直接つながる機会も用意しています。
子どもたちには、自分のアイデアが形になり、将来のキャリアに直結する「本物の学び」を実感してもらうことを目指しています。
キャリアタイムへの思い
「プログラミング=難しい」と思われがちですが、実は論理的思考や問題解決力といった、どんな仕事でも役立つ力を育む最高のツールだと考えています。子どもたちには「未来の選択肢が広がるワクワク感」を感じてもらいたいと参加しました。エンジニア志望でなくても、生き生きと働くための土台を築けることを伝えたいと思っています。
工夫していること
専門用語をできるだけ使わず、日常にあるものに例えて説明するようにしています。また、論理パズルや体を使ったゲームなど、パソコンを使わずに「プログラミング的思考」を楽しめる活動も重視しています。
キャリア教育を通して感じてほしいこと
プログラミングというとゲーム制作やロボット制作が、学習テーマとして提案されがちですが、実はコンピュータの基本原理を学ぶことも、とても楽しいことです。コンピュータの基本原理を理解することで、コンピュータの可能性を引き出せることに気付いてもらえると嬉しいです。
子どもたちの反応で印象に残っていること

子どもたちが「コンピュータの仕組みって面白い!」と目を輝かせる瞬間が印象的でした。
パソコンを使わなくても、ゲームをテーマにしなくても、子どもたちは本質的で、深く学べるテーマがあれば、大いに楽しんでくれるということを、再認識させてもらいました。
名古屋市のキャリアタイムの取り組みについて
名古屋市のキャリアタイムの取り組みは、地域全体で子どもたちに多様な学びの場を提供し、将来への展望を広げている点が素晴らしいと感じています。実社会と結びついた体験を通じて、職業観を形成するだけでなく、自分の得意や興味を掘り下げるきっかけにもなるはずです。子どもたちが、将来の選択肢を具体的に描けるよう、さらに充実した支援が進むことを期待しています。



佐藤さん
プログラミングは文系・理系を問わず、将来の選択肢を広げる力です。子どもたちが「好きなこと×デジタル技術」で新たな道を切り開いていく姿を応援したいです。
今後も学校や地域と連携しながら、より多くの子どもたちに学ぶ機会を提供し、「好きことで学び、学んだことで誰かに喜んでもらえる」という体験をつくります。
仕事の楽しさを実感できる場が、もっと増えていくと嬉しいです。

INFORMATION
お名前
佐藤 晋平さま
名古屋の好きなところ
歴史の深さと未来の明るさが同居するところ
お仕事
プログラミング教室BINGO
サイト
https://bingo.jp.net/

体験した感想を聞きました!
保育士とアナウンサーのお仕事を体験した、前山小学校6年生の前田さんに感想を聞きました!

前田さん
保育士の体験では、ゆっくり話すなど、読み聞かせのポイントを教えてもらいました。
また、アナウンサーの体験では人に伝わりやすいしゃべり方について教えてもらいました。
知っている職業でも、細かいところまで知らなかったことが多くありました。
簡単そうに見える職業でも、すごく苦労してるということも分かりました。
今、私は将来何になりたいかはまだ決まっていないけれど、今回お仕事を体験してみて、アナウンサーもいいなと思いました。
好きなことに向かって取り組むのは大変だけど、その仕事ができたときにやりがいがあると思うので、自分もやりたい仕事を見つけ、その好きなことに向かって努力していけたらいいなと思います。
前山小学校 教務主任の矢野先生にお話をうかがいました!
今回のキャリアタイムの取り組みについて
子どもたちがさまざまな職業体験に取り組めるようにしたいという思いから、三つの学校が合同で授業を実施しました。また、ブロックの中学校(牧の池中学校)へ進学したときに、「あのとき一緒に体験したね!」と話せる関係を築いてほしいという願いを込めて計画しました。
子どもたちにとって、「本物」の職業の方から話を伺ったり、体験指導したりしていただける機会は大変貴重です。それぞれの職業の方が働く上で意識されていることや、準備の大切さなどを知る、大変すばらしいきっかけとなったと考えています。
体験中の児童の様子や変化について
とても熱中して活動に取り組む様子が見られました。例えば「マジシャン体験」教室では、指導いただく先生の話を聞き、「マジックが成功するだけではだめなんだ」「見ている人と一緒に場を盛り上げる、つくることが大切と気付いた」と振り返っている児童が多くいました。
また、ほとんどの児童が「働く大変さと、楽しさを知ることができた」「将来、自分がどんな職業に就いたとしても、役に立つことをたくさん学べた」と振り返ることができていました。

矢野先生
多くの児童が、この「お仕事パビリオン」をきっかけに「働く」ことについて改めて考えてみたと振り返っています。また、日々の生活の中で働く人と接するときの見方が変わったという声も聞いています。
ボランティアとして参加していただいた保護者からは、「子どもたちがさまざまな職業のことを知ることができる、体験できるのは大変有意義」「中学校で一緒になる子たちが、名前を聞き合ったり、活動を終えてハイタッチしたりしている姿を見て、中学校生活が親子共々楽しみになりました」という大変好評の声をいただきました。
今回の企画をした、牧の池中学校 キャリアナビゲーターの
桑波田(くわはた)さまにお話をうかがいました!
キャリアナビゲーターとは?
キャリアコンサルタントの国家資格を有する専門家
名古屋市では、全ての市立中学校、高等学校および特別支援学校に常勤で配置されています。キャリアタイムの企画・実施、児童生徒の個別支援、教職員向け研修、保護者向け講演会など、教員や企業などと協働して、キャリア形成支援に係る取り組みを進めています。

桑波田さん
子どもたちの「好き」「できる」という気持ちを大切にするため、子どもたちが自ら楽しんで積極的に関われる授業になるようこだわりました。
子どもたちがキャリアタイムを行うことで、自分の興味・関心を知ったり、社会に感心を持ったりと、主体的に考え動く力が養われることを願っています。
今回の取り組みで工夫した点
児童が興味を持って体験学習に取り組めるように、あらかじめアンケートを取り、児童の希望が多い職種から講師を選定しました。また、できるだけ少人数で体験できるように1講座を11~13名の定員とし、一人ひとりが「本物のヒト・モノ・コト」である講師と関われる体験授業にしました。
さらには同じ学校で固まらず、他の小学校の友だちと関われるように、学校ごとの人数調整や児童が座る場所にも配慮し、中学での友人関係の悩みの軽減のための取り組みも行いました。
苦労した点
一人ひとりの興味・関心が異なるので、どのような授業内容であると子どもたちが楽しんで取り組めるか、授業内容を考えることにとても苦労しました。そのため、企業や団体の講師との打ち合せで、お互いに意見を出しながら、子どもたちにとってよりよい授業になるように組み立てていきました。
印象的だったこと
最初は不安そうにしていた子どもたちも、授業が進むにつれて目を輝かせながら取り組んでいたことです。学校の垣根なく、同じグループになった友だちと仲よく取り組む姿は印象的でした。自校に帰る時も、「授業が楽しかったね」や「4月に(友だちと)会えるのが楽しみだね」と話している姿を見ることができ、大変嬉しく思いました。
取り組みの反響など
保護者からは「子どもたちのことを考えた、よい企画であった」「とても貴重な体験で、来年度以降も是非やってほしい」とのお言葉をいただきました。
また、児童は「実際に体験したことで、難しい職業ではなく、たくさんの工夫ができる楽しい職業であると知ることができた」と仕事内容について気付きを得たり、「今までは知らない仕事だったけれど興味がわいた」「今日教わったことを今後もいかしていこうと思う」と、興味・関心を持ったりすることができました。
さらには「将来こんな仕事につきたい」「(自分にとっては難しいことを)簡単にやる姿に憧れました」と将来の夢や憧れを抱く感想もありました。

桑波田さん
2025年度も「お仕事パビリオン」が開催されることが決まりました。
2024年度は時間の制約がありできないことも多かったので、2025年度はしっかりと時間をかけて取り組みたいと思います。例えば、体験する職業を決める際には、職業を選ぶだけではなく、実際の就職活動のようにエントリーシートを記入して「どうしてこの仕事を体験したいのか」「体験時に何を頑張りたいか」などをしっかりと考え取り組み、自己理解や社会生活を学べるようにします。
さらには「お仕事パビリオン」の取り組みの名前を募集したり、しおりを自分たちで作成したりと、自分たちで作り上げるキャリアタイムにしていくことで、児童の自己効力感や達成感を持たせる関わりをしたいと考えています。
その他、名古屋市のキャリア教育推進の取り組み
小学生向けキャリア教育プログラム「ミライトラベルDAY」
多くの企業・団体がそれぞれブースを出展し、子どもたちが好きなブースに参加してさまざまな業界の仕事内容や技術、製品、働く人の思いなどに触れることで、自分の「好き」や「できる」に気付き、自分の将来について考えるきっかけとすることを目的に、2024年11月・2025年1月に開催されました。
当日の様子をYouTubeで公開しています。
キャリアタイムに協力していただける企業・団体「ナゴヤキャリアタイムサポーター」の募集や、キャリア教育に関する情報を
発信しています。